はじめに
こんにちは、薬剤師のおちょおまんです。 今回は、添付文書を見るとギョッとする成分が入っている軟膏たちについて解説します。
・エキザルベ:「混合死菌浮遊液」
・強力ポステリザン(ヘモポリゾン):「大腸菌死菌浮遊液」
「えっ、大腸菌? 傷口やデリケートな部分に菌を塗って大丈夫なの?」 こう思った方も少なくないでしょう。
実はこれ、ただの混ぜ物ではありません。 人間の免疫システムを逆手に取った、非常に理にかなった軟膏なのです。
今回は、なぜステロイドと一緒に「菌の死骸」を塗るのか、そのメカニズムを深掘りします。

エキザルベの成分に『大腸菌』とか『ブドウ球菌』って書いてあるのだ! しかも変な匂いがするのだ!これ本当に傷口に塗っていいのだ?

その『菌』こそが、この薬の本体よ! あえて死んだ菌を塗ることで、体の修復スイッチを強制的に入れてるの。 まさに『毒をもって毒を制す』賢い薬なんだから!
【成分】「エキザルベ」と「ポステリザン」の違いは菌の種類
まずは成分の整理です。どちらも「死菌」を使っていますが、中身が少し違います。
・強力ポステリザン(ヘモポリゾン)
1g中
・大腸菌死菌浮遊液 0.163mL
➡︎大腸菌死菌 約2.59億個
・日局ヒドロコルチゾン 2.5mg
死菌の中身は「大腸菌」の死菌のみです。
・エキザルベ
1g中
・混合死菌浮遊液 0.166mL
➡︎大腸菌死菌 約1.5億個
➡︎ブドウ球菌死菌 約1.5億個
➡︎緑膿菌死菌 約0.15億個
➡︎レンサ球菌死菌 約0.15億個
・日局ヒドロコルチゾン 2.5mg
死菌の中身は「混合死菌」です。 大腸菌、ブドウ球菌、緑膿菌、レンサ球菌という、皮膚感染症の代表的な原因菌4種がミックスされています。
【メカニズム】なぜ死菌で治る?「局所感染防御作用」と「創傷治療促進作用」
なぜ、死んだ菌を塗ると傷が治るのでしょうか?
① 免疫のサイレンを鳴らす
死菌を塗布すると、体は「敵(細菌)が侵入してきた!」と勘違いします。
② 白血球が集結する(遊走能)
警報を聞きつけた白血球(好中球やマクロファージ)が、塗った場所に一気に集まってきます。
③ 掃除と修復が始まる
集まった白血球が、傷口の汚れ(デブリ)を貪食して掃除し、同時に「肉芽(にくげ)形成」を促進させます。
つまり、死菌は免疫細胞を呼び寄せるための「おとり」として機能し、自身の自然治癒力をブーストさせているのです。
【配合の妙】ステロイドの「弱点」を「死菌」がカバーする
この薬の最大の特徴は、「ステロイド」と「死菌」を組み合わせている点です。 実はこの2つ、真逆の性質を持っています。
・ステロイド:炎症を抑えるが、免疫を下げて感染しやすくし、傷の治りを遅らせるリスクがある。
・死菌:免疫を上げて感染を防ぎ、傷の治りを早める。
本来、ステロイドは傷の治りを遅くしてしまうため、傷口には使いにくい薬です。 しかし、死菌がその弱点をカバーします。 これにより「ステロイドで炎症を抑え」ながら「死菌で傷を治す」という、いいとこ取りを実現しているのです。
【現場の知識】独特の「臭い」と使用感の注意点
投薬時の注意点として、この2剤には特徴的な「フェノール臭」があるので注意が必要です。
添付文書の性状欄にも記載がありますが、絵の具のような匂いがします。これが独特のフェノール臭と呼ばれるものです。腐っているわけでも、古いわけでもないので、「少し独特な匂いがしますが、成分の香りなので安心してください」と伝えると親切です。
【まとめ】
・エキザルベは「4種の混合死菌」、ポステリザンは「大腸菌死菌」を含有している。
・死菌が「おとり」となり、白血球を呼び寄せて感染防御と肉芽形成を促進する。
・ステロイドの副作用を死菌がカバーする「攻守最強」の配合である。
・独特のフェノール臭がある(絵の具のような匂い)
参考文献
https://www.maruho.co.jp/medical/articles/eksalb/mechanism/index.html
エキザルベの薬効薬理
https://www.maruho.co.jp/medical/articles/posterisanforte/pharmacist/check02.html
2.薬剤師が知っておくべき強力ポステリザンの特性
https://renaissance-media.jp/articles/-/8522?page=1
【健康】大腸菌死菌はなぜ痔の治療に使える?仕組みを解説!
https://www.fizz-di.jp/archives/1007961474.html
『エキザルベ』ってどういう薬?
https://touchi-c.com/2024/11/01/3634/
創傷治癒(傷が治るまでの)過程
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