はじめに
こんにちは、薬剤師のおちょおまんです。
調剤室で粉薬を作っている時、ふと疑問に思ったことはありませんか?
・コデインリン酸塩散 1%
・ジヒドロコデインリン酸塩散 1%
「名前も似てるし、濃度も同じ1%。これ、一体何が違うの?」 「麻薬金庫に入ってるのとそうじゃないのあるけど何が違うの?」
実はこの2つ、似ているようで「薬としての強さ」や「製品のラインナップ」に明確な違いがあります。 今回は、「コデイン vs ジヒドロコデイン」という成分単体のガチンコ比較を行います。

『コデイン』と『ジヒドロコデイン』、早口言葉みたいなのだ。どっちも麻薬なのだ?何が違うのだ?

成分そのものはどっちも『麻薬』よ。でも、薬局にある『1%散』はどっちも麻薬扱いじゃないの。濃度によって家庭麻薬ってのになるから一緒に確認しようか
コデインとジヒドロコデインの構造と強さの違い|鎮咳作用は2倍?
まず、コデインとジヒドロコデインの基本スペックを比較しましょう。
コデインとジヒドロコデインの構造の違い
・コデイン(Codeine):天然のアヘンに含まれる成分。
・ジヒドロコデイン(Dihydrocodeine):コデインの化学構造の一部(二重結合)に水素を添加(還元)したもの。
「ジヒドロ(Dihydro-)」とは「水素が2つ付いた」という意味です。 構造を変えることで、代謝分解を受けにくくし、より安定して作用するように設計されています。
コデインとジヒドロコデインの強さの違い(鎮咳作用)
一般的に、鎮咳作用の強さは以下の通りです。
ジヒドロコデインはコデインの約2倍の鎮咳作用
理論上は、ジヒドロコデインの方が少ない量で強力に効きます。 そのため、同じ「1%散」を同じ量飲んだ場合、単純計算ではジヒドロコデイン散の方が効き目が強いことになります。
1%散・5mg錠・配合錠のラインナップと麻薬・非麻薬の区分
コデインリン酸塩とジヒドロコデインリン酸塩の製品について見ていきましょう。ここが重要な点で、剤型、濃度によって麻薬・非麻薬と扱いが変わってきます。
コデインリン酸塩水和物の場合
・錠剤(5mg、20mg)
・散剤(1%、10%、原末)
※コデインリン酸塩とリン酸コデインの2つの名称がありますが、成分としては同じです。メーカーによって名称が異なります。
1%散、5mg錠は「家庭麻薬(非麻薬)」扱いです。
ジヒドロコデインリン酸塩の場合
・散剤(1%、10%、原末)
・合剤(フスコデ、カフコデN、セキコデ) ※単剤の錠剤はなく配合錠として存在。
1%散、合剤は「家庭麻薬(非麻薬)」扱いです。
なぜ非麻薬(家庭麻薬)? 1%散と5mg錠の「千分中十分以下」ルール
ここが新人薬剤師の混乱ポイントですが、成分としてはどちらも麻薬指定されています。 しかし、特例ルールによって「1%以下(1000分中の10以下)」であれば、家庭麻薬として「非麻薬」扱いになります。
・コデインリン酸塩散1%
・コデインリン酸塩錠5mg (錠剤重量500mg中コデイン5mg➡︎1%)
・ジヒドロコデインリン酸塩散1%
これらは家庭麻薬となり、麻薬処方箋も不要です。
・コデインリン酸塩錠20mg 、コデインリン酸塩散10%、ジヒドロコデインリン酸塩散10%
これらは「1%の壁」を超えているため、金庫管理が必要なガチの「麻薬」となります。
コデインはメジコンより強い?麻薬性と非麻薬性の鎮咳効果比較データ
ここで一つ、重要なデータを紹介します。 「麻薬性鎮咳薬(コデイン類)は、非麻薬性鎮咳薬(メジコンなど)より圧倒的に強い」と思っていませんか?
実は、ACCP(米国胸部学会)のガイドラインや多くの臨床データにおいて、以下の見解が示されています。
・成人の急性咳嗽において、コデインとデキストロメトルファン(メジコン)の鎮咳効果に、明確な有意差は見られない。
「えっ、麻薬なのに!?」と思うかもしれません。 データ上、咳を止める強さは「ほぼ同等」とされることが多いのです。
▼メジコンやアストミンの強さの違いや使い分けについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
それでもコデインが処方される理由
ではなぜ麻薬性を使うのか? それは「鎮静作用(眠気)」があるからです。 咳そのものを止める力に大差はなくても、強力な鎮静作用で脳をぼーっとさせ、「咳で起きることなく眠れる」という状態を作る。これが臨床的な満足度に繋がっている側面があります。
【結論】コデイン・ジヒドロコデイン・メジコンの臨床での使い分けと処方意図
以上の特徴を踏まえると、以下のような使い分けが見えてきます。
1. 「粉薬」で処方する場合
同じ「1%散」を使うなら、理論上コデインの2倍強い「ジヒドロコデインリン酸塩散」の方が、少ない量で効果を期待できるため合理的かもしれません。
2. 「錠剤」で処方する場合
単剤でいきたいなら、「コデインリン酸塩錠5mg」です。 合剤がいいなら、ジヒドロコデインを含む「フスコデ配合錠」などが選択肢になります。コデインリン酸塩錠20mgは麻薬となるので扱いに注意が必要です。
3. まずは「非麻薬性鎮咳薬」から
データ上、効果に劇的な差がない以上、便秘や依存のリスクがある麻薬性鎮咳薬を最初から使う必要はありません。まずはメジコンやアストミンなどの非麻薬性を使い、それでも「眠れないほど辛い」場合に、鎮静作用も期待してコデイン類を選択するのがベターです。
【まとめ】
・ジヒドロコデインはコデインと比べると鎮咳作用は約2倍強い。
・どちらも1%以下の製剤は「家庭麻薬(非麻薬扱い)」である。
・ジヒドロコデインは単剤の錠剤がなく、配合剤(フスコデ)となる。
・データ上、麻薬性(コデイン)と非麻薬性(メジコン)の鎮咳効果に大きな差はない。
・麻薬性のメリットは、鎮静作用による「睡眠の確保」にある。
参考資料
https://rikunabi-yakuzaishi.jp/contents/hiyari/074
麻薬と非麻薬があるコデインリン酸塩の注意点
https://www.fizz-di.jp/archives/1072101225.html
『メジコン』と「コデイン」、同じ咳止めの違いは?~風邪の咳に対する効果と副作用


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