はじめに
こんにちは、薬剤師のおちょおまんです。
本日は貼り薬。ハッカの香りが強い「ロコアテープ」についてです。
この薬、渡される時に必ずこう言われるはずです。
「1日に2枚までしか貼っちゃダメですよ」
「えっ、痛いところが3箇所あったらどうするの?」
「湿布なんだから、少しくらい多くても平気でしょ?」
そう思うかもしれませんが、実はロコアテープは「湿布の皮を被った飲み薬」と言われるほど強力な薬です。 今回は、ロコアテープの正体と、ジクトルやロキソニンとの違い、そして注意すべき相互作用について解説します。

膝も腰も痛いから、ロコアテープを全身に5枚くらい貼りまくるのだ!

ストップ! ロコアは1日2枚まで! それ以上貼ったらオーバードーズよ!

えっ? たかが湿布なのだ? 貼り薬でオーバードーズなんてあるのだ?

ロコアは吸収が良すぎて、2枚貼るだけで『飲み薬』を飲んでるのと同じ血中濃度になるの。胃に穴が開くわよ。
【特徴】ロコアテープはなぜ「最強の湿布」なのか?ハッカ油と経皮吸収の秘密
ロコアテープ(成分:エスフルルビプロフェン)は、2016年に登場した経皮吸収型鎮痛消炎剤です。従来の湿布と決定的に違うのは、その「ものすごい浸透力」にあります。
ハッカ油の力で深部へ浸透
ロコアには「ハッカ油」が含まれています。 「スースーさせるためでしょ?」と思われがちですが、実はこれが「吸収促進剤」の役割を果たしています。
ハッカ油の成分が皮膚の角質バリアを一時的に緩め、薬の通り道を作ります。
これにより、成分が筋肉や関節の奥深くまで到達し、変形性関節症などの深い痛みに強力に効くのです。
NSAIDsの分子量と融点
①分子量が小さいほど、皮膚を通りやすい
②融点が低いほど、溶け出して浸透しやすい
成分のエスフルルビプロフェンは、分子量244.26、融点109-113℃と、痛み止め(NSAIDs)の中でも「小さくて溶けやすい」性質を持っています。 ハッカ油のブースト効果だけでなく、そもそも吸収されやすい成分を選んでいるのがロコアの強みです。
添付文書の「1日2枚まで」は絶対!枚数制限の理由とオーバードーズのリスク
添付文書には厳格に「1日2枚まで」と書かれています。これには明確な科学的根拠があります「ロコアテープを2枚貼ると、フルルビプロフェンの飲み薬を1日分(通常量)飲んだのと、血中濃度が同じになる」
つまり、2枚貼った時点で、体の中は「飲み薬を1日分飲んでいる」のと同じ状態なのです。
もし「痛いから」と3枚目を貼ると、それは医学的に「過量投与(オーバードーズ)」となり胃潰瘍や腎不全のリスクが跳ね上がります。「たかが湿布」と甘く見てはいけない理由がここにあります。
【徹底比較】ロコア・ジクトル・ロキソニンテープの違い。強さと使い分け一覧表
「全部同じようなテープだけど、何が違うの?」という疑問にお答えします。
使い分けのイメージ(局所のロキソニン、深部のロコア、全身のジクトル)
- ロキソニン: 「ここが痛い」という場所に貼る。安全性重視で、日常的な痛みに最適。まずはこれを使います。
- ロコア: 「膝の軟骨がすり減って痛い」など、骨や関節の深い痛みに。局所にガツンと効かせつつ、全身からも痛みを抑えます。変形性関節症の切り札です。
- ジクトル: 「全身に効かせる」ために貼る。痛い場所に貼らなくても、背中やお腹に貼れば全身に効くため、がんの痛み止めなどで使われます。
【要注意】ワルファリンとロコアテープが併用注意な3つの理由
ここが今回の記事で最も伝えたいリスク管理のポイントです。血液サラサラの薬「ワルファリン」を飲んでいる方は、ロコアテープとの併用に注意が必要です。
理由1:代謝酵素(CYP2C9)の競合
ロコアテープとワルファリンは、どちらも肝臓の「CYP2C9」という酵素で分解されます。併用すると分解の順番待ちが発生し、ワルファリンが体内に残りやすくなって効果が増強されます。
理由2:タンパク結合の奪い合い
血液中では、薬の多くがタンパク質と結合して運ばれます。実際に効力を発揮するのは、タンパク質と結合していない「遊離型(フリー)」の薬だけです。 ロコアとワルファリンはどちらもタンパク質にくっつく力が強いため、場所の取り合いになります。はじき出されたワルファリン(遊離型)が増えることで、作用が急激に強まります
理由3:血小板機能抑制のダブルパンチ
ロコア(NSAIDs)には血を固まりにくくする作用(血小板凝集抑制)があります。これにワルファリンの効果が重なることで、単独使用より出血リスクが跳ね上がります。
これら3つの要素により、鼻血が止まらない、歯茎から出血する、最悪の場合は脳出血や消化管出血を起こす恐れがあります。 ロキソニンテープではあまり問題になりませんが、吸収率の高いロコアテープでは数値(PT-INR)が劇的に悪化することが報告されています。
薬剤師が教えるロコアテープの「安全な貼り方」と飲み薬との併用注意点
飲み薬の痛み止め(NSAIDs)と併用しない
ロコアは「貼る飲み薬」です。ロキソニンやイブなどの「飲み薬」と一緒に使うと、薬の量が倍になって胃潰瘍や腎障害のリスクが高まります。
ロコアを貼っている間は、飲み薬のNSAIDsは避けるのが基本です。
ニューキノロン系抗菌薬との飲み合わせに注意
ニューキノロン系抗菌薬が持つGABA阻害作用を、NSAIDsが増強するため併用で痙攣が起こりやすくなります。ロコアテープではその吸収の良さから内服の同程度の効果が期待されるため注意が必要です。
添付文書上でも一部のニューキノロン系は併用禁忌となっており、その他のニューキノロン系も併用注意となっております。風邪や膀胱炎で抗生物質が出た時は、必ずお薬手帳を見せて「ロコアを使っています」と伝えましょう。
まとめ:ロコアテープは「貼る飲み薬」正しく使って痛みを止めよう
・ロコアテープは、飲み薬と同等の成分が全身に回る「強力な貼付剤」である。
・「1日2枚」という制限は、血中濃度が飲み薬の上限に達するため設けられている。
・ワルファリン服用者が使用すると出血リスクが激増するため、原則使用を避けるべき。
・ニューキノロン系との併用による痙攣に注意。
参考資料
https://www.min-iren.gr.jp/news-press/shinbun/20240917_50865.html
副作用モニター情報〈623〉 ワルファリンとロコアテープの薬物間相互作用
https://www.japic.or.jp/mail_s/pdf/25-10-1-07.pdf
JAPIC「医療用医薬品集」2025 更新情報2024年10月版 (704頁)
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/murasaka/202207/575275.html
ロコアテープが経皮吸収に優れている3つの理由
https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/53/6/53_579/_pdf
製剤化のサイエンス
https://www.goodcycle.net/fukusayou-kijyo/0061/
第61回 NSAIDsの血小板機能障害はなぜ起こるの?
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