なぜポリフルは下痢と便秘に効く?ポリフル出荷調整に伴う代替薬の選び方

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最近の調剤薬局での「あるある」といえば…… 「IBS(過敏性腸症候群)によく出るポリフルの在庫が、もうすぐ枯れそう!」という大問題ですよね。

下痢にも便秘にも使える超万能薬ですが、「なんで相反する症状に同じ薬が効くの?」と不思議に思ったことはありませんか? また、いざ在庫が切れた時、医師へスムーズに代替薬を提案できるでしょうか。

さらにIBSといえば、「イリボーは女性だと用量が違う」という処方監査のトラップもあります。

今回はポリフルや他のIBS治療薬の使い方や注意点、意外なものとして催眠療法などについて調べてみました。

ポリフルが下痢の患者さんにも便秘の患者さんにも処方されてるのだ!真逆の症状なのに不思議なのだ。

IBS治療の第一選択薬あるあるね。ポリフルは腸の中の水分を自在に操る、高機能なスポンジみたいなものよ。

ただ最近はポリフルが出荷調整で手に入りにくいから、薬剤師がしっかり症状を聞き取って代わりの薬を提案できないとダメよ。

なぜポリフルは下痢にも便秘にも効くの?吸水ポリマーが腸内の水分を操るメカニズム

ポリフル(ポリカルボフィルカルシウム)は、腸の動きを直接止めたり動かしたりする薬ではありません。 その正体は、水分を吸収して保持することができる「高分子の吸水ポリマー」です。紙おむつに使われている素材の医療版とイメージすると分かりやすいです。

この吸水ポリマーが、腸内で下痢と便秘の両方を解決する理にかなった働きをします。

下痢に対するメカニズム
腸内に過剰な水分がある状態(下痢)では、ポリフルが余分な水分を吸収します。水分を吸ってゲル状に固まることで、便を適度な硬さに形成し直します。

便秘に対するメカニズム
腸内の水分が不足して便が硬くなっている状態(便秘)では、ポリフルが腸内の水分を保持して便が硬くなるのを防ぎ、同時に便のかさも増やし排便を促します。

腸内の水分をちょうどいい状態にしてくれるので下痢・便秘どちらにも効果があります。


ガイドラインに基づくポリフル出荷調整時の症状別の代替薬

そんな万能なポリフルですが、出荷調整が続いており現在なかなか手に入りません。ポリフルの出荷調整が続く中、薬剤師には患者さんの主症状に合わせた的確な代替薬の提案スキルが求められます。

ただ似た薬に変えるのではなく、「IBS診療ガイドライン2020」を活用しましょう。 全般に効くポリフル(エビデンスA)が手に入らない場合、それぞれの病型で「エビデンスレベルA」を獲得している薬へ切り替える提案が最も説得力を持ちます。

下痢症状(IBS-D)への代替提案
イリボー(ラモセトロン)
・ガイドライン評価:エビデンスレベルA、推奨の強さ強
ロペミンのように腸を無理やり止めるのではなく、セロトニン5-HT3受容体をブロックし、腹痛や下痢を抑制します。

便秘症状(IBS-C)への代替提案
リンゼス(リナクロチド)、アミティーザ(ルビプロストン)
・ガイドライン評価:エビデンスレベルA、推奨の強さ強
リンゼス
グアニル酸シクラーゼ受容体に作用して水分分泌を促します。さらに産生されたcGMPが痛みを伝える神経を抑制します。便秘だけでなくお腹の痛みにも有効です。

アミティーザ
小腸のクロライドチャネルを活性化して水分を分泌させます。海外ではIBS-Cへの適応がありますが、日本では「慢性便秘症」の病名でのみ保険適用となっており、IBS単独病名での保険適用はない点に注意が必要です。

下痢と便秘を繰り返す(交替型:IBS-M)への代替提案
セレキノン(トリメブチンマレイン酸塩)
・ガイドライン評価:エビデンスレベルB、推奨の強さ弱
交替型でエビデンスAなのはポリフルのみです。欠品時は、腸の運動が活発な時は抑え、低下時は活発にする「運動の正常化作用」を持つセレキノンが最も現実的な選択肢となります。

軽症例やベース治療への代替提案
プロバイオティクス(ミヤBM、ビオフェルミン等)
・ガイドライン評価:エビデンスレベルA、推奨の強さ強
有用性、安全性、コスト面にも優れIBSに有効と考えられています。単独でも他剤との併用提案でも非常に重宝します。



イリボー(ラモセトロン)は男性と女性で投与量が違う?

下痢型IBSの特効薬とも言えるイリボー(ラモセトロン)ですが、絶対に覚えておかなければならないのが「男女で開始用量と最高用量が違う」という点です。

男性の場合 開始用量:5μg 最高用量:10μg
女性の場合 開始用量:2.5μg 最高用量:5μg

イリボーは腸のセロトニン受容体(5-HT3)をブロックして下痢を止める薬ですが、効きすぎると重篤な便秘や虚血性腸炎を引き起こすリスクがあります。女性は男性よりも血中濃度が高くなりやすく、この「便秘の副作用」が強く出やすい傾向があったため、発売当初は男性専用の薬として承認されていました。

その後、用量を半分(2.5μg)に減らすことで、女性でも安全かつ十分に効果が得られることが実証され、女性への適応が追加されたという歴史があります。 処方監査の際は、患者さんの性別と用量が合っているか、必ずチェックするクセをつけましょう。


IBS治療で推奨される催眠療法(心理療法)と脳腸相関

IBSは、腸の臓器そのものに炎症や潰瘍などの異常がないのに症状が出る病気です。その根本的な原因は「脳腸相関」という、脳が感じるストレスが自律神経を介してダイレクトに腸の異常運動を引き起こすメカニズムにあります。

そのため、薬物療法だけで改善しない難治性のIBS患者さんに対しては、海外や日本のガイドラインでも心理療法が推奨されています。(エビデンスレベルB、推奨の強さ強)

催眠療法と聞くと怪しいように聞こえるかもしれませんが、これは科学的に効果が立証された立派な医学的アプローチです。

薬剤師が直接催眠療法を行うわけではありませんが、「IBSはストレスや脳の疲れが腸に反映されている状態なので、薬だけでなく、リラックスする時間を作ったり、心療内科でのカウンセリングが有効なケースも多いんですよ」とアドバイスできると、患者さんの心の負担を大きく減らすことができるかもしれません。


【まとめ】IBS(過敏性腸症候群)の服薬指導と代替薬提案

・ポリフルは水分を吸い込む吸水ポリマーであり、下痢型・便秘型、両方に効く。

・ポリフルが出荷調整の際は、患者の主症状(下痢メインか便秘メインか)を聞き取り、イリボーやリンゼス、両方に効くセレキノンなどを医師に提案する。

・イリボーは女性の用量は男性の半量(開始2.5μg)に設定されている。

・薬で治りにくい場合は催眠療法などの心理学的アプローチがガイドラインでも推奨されるほど有効である。


参考資料

機能性消化管疾患診療ガイドライン2020
https://www.jsge.or.jp/committees/guideline/guideline/pdf/IBSGL2020_.pdf#page=62

イリボー(ラモセトロン塩酸塩)は、女性にも投与できるのか?
https://www.fpa.or.jp/johocenter/yakuji-main/_1635.html?blockId=39368&dbMode=article

脳腸相関③:脳腸相関は腸内細菌なしには語れない?!
https://institute.yakult.co.jp/feature/008/02.php



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