こんにちは、30代新人薬剤師のおちょおまんです。
季節の変わり目、寒暖差や疲労で免疫力が低下すると、体内に潜伏していたウイルスが元気に暴れだします。
現場で処方箋を受けて迷うのが、抗ウイルス薬の「用法・用量」ではないでしょうか。同じ薬でも、疾患が単純ヘルペスなのか帯状疱疹なのか、あるいは再発抑制なのかによって、飲む回数や日数も異なります。
「この使い方は何の治療だっけ?」と一瞬迷ってしまう。そんな新人薬剤師さんのために、今回は主要な抗ウイルス薬の使い分けを整理しました。
最新のPIT療法や再発抑制の基準についても網羅したので、現場で迷った時の参考になればと思います。

アメナリーフの処方箋に「1回6錠」って書いてあるのだ。これ、1日1錠を6日分の間違いじゃないのだ?

それ「PIT療法」っていう戦略だよ。チクチクした瞬間に6錠(1200mg)ブチ込んで、ウイルスを速攻で消火すんの!空腹だと効果半分になっちゃうから「軽く食べてから即飲み」って念押ししときなよ!
帯状疱疹と単純疱疹(ヘルペス)の違い
まずは敵を知ることから。似ているようで、予後(治り方)が大きく異なります。
単純疱疹(単純ヘルペス)の特徴
【原因】単純ヘルペスウイルス(HSV-1, HSV-2)。成人の約半数が子供の頃に感染済みと言われ、唾液や性行為、食器の共用などで感染する非常に強いウイルスです。
【症状】口周りや性器、肛門、腰など限られた部位に、ピリピリ・チクチクした前駆症状の後、水ぶくれが複数できます。
【再発】ヘルペスの7-8割は再発によるもので、特に性器ヘルペスの場合は年6回以上再発する人が約3割にものぼります。
帯状疱疹の特徴と注意すべき後遺症(PHN)
【原因】水痘帯状疱疹ウイルス。初めての感染は「水ぼうそう」として発症し、その後も体内の神経節に潜伏し続けます。
【症状】左右どちらかの神経に沿った範囲(デルマトーム)に、帯状に発疹や水ぶくれが現れます。
【再発】再発率は約1〜6%(長期観察では5〜6%)と言われています。
【後遺症】皮膚の症状が消えた後も、半年から数年単位でしつこい帯状疱疹後神経痛(PHN)と呼ばれる神経痛が残ることが少なくありません。
抗ウイルス薬4剤の適応・用法・用量まとめ
添付文書の記載をまとめました。服用回数や適応の違いに注意が必要です。
※ファムビルPIT療法は初回服用後12時間空けて2回目を使用。
※1回分の用量で記載(例:バルトレックス 帯状疱疹➡︎1回1000mgを1日3回、1日量3000mg)
| 項目 | アメナリーフ | バルトレックス | ファムビル | ゾビラックス |
| 帯状疱疹(7日間) | 400mg 1日1回 | 1000mg 1日3回 | 500mg 1日3回 | 800mg 1日5回 |
| 単純疱疹(5日間) | 適応なし | 500mg 1日2回 | 250mg 1日3回 | 200mg 1日5回 |
| PIT療法(1日のみ) | 1200mg 1日1回 | 適応なし | 1000mg 1日2回 | 適応なし |
| 性器ヘルペス再発抑制 | 適応なし | 500mg 1日1回 | 適応なし | 20mg/kg 1日4回(小児) |
アメナリーフやバルトレックスなど4剤の違い・使い分け
・アメナリーフ(アメナメビル)
腎機能の影響をほぼ受けない唯一の薬剤です。1日1回で済むため、飲み忘れの心配が最も少ないです。ただし、単純疱疹の通常治療(5日間)に適応がない点と薬価が高い点は要注意。
・バルトレックス(バラシクロビル)
ゾビラックスを改良し、少ない回数で効くようにした現在の「標準薬」です。性器ヘルペスの再発抑制に適応があり、実績も豊富です。ただし、腎排泄であるため、腎機能によっては調整が必要。(アシクロビル脳症などが起こりやすい)
・ファムビル(ファムシクロビル)
バルトレックスと同じく腎排泄ですが、PIT療法に適応があります。後発品があり安価なため、腎機能に問題がなく、かつ経済性を重視したい患者さんのPIT療法に向いています。
・ゾビラックス(アシクロビル)
元祖抗ウイルス薬です。バイオアベイラビリティが低いため、大人は1日5回服用の必要があるため使われることは少ない。現在は、小児用の顆粒剤、入院中の点滴、あるいは外用薬(軟膏・クリーム)としての役割がメインです。
「PIT療法」とは?再発予兆時に1日で完結する治療戦略
「あらかじめ薬を持っておいて、予兆(チクチク、ムズムズ)が出たらすぐ飲む」のがPIT療法。アメナリーフとファムビルに適応があります。
・アメナリーフ:1回飲むだけで完結するので、飲み忘れの心配がなく、腎機能も気にしなくてOK。
・ファムビル:後発品があるので、お財布に優しいのがメリット。
※バルトレックス、ゾビラックス:毎日飲む「性器ヘルペス再発抑制」の適応あり。1日投与のPITには適応がない。1日分だけ処方されたら疑義照会を検討しましょう。
アメナリーフが食後投与の理由:空腹時は効果が半減?
空腹で飲むと、効果(AUC)が約5割まで低下します。軽食をとってからの服用が必須です。インタビューフォームを見ると、標準的な低脂肪食でデータ取っています。なので以下のようなものを食べれば問題ないと考えられます。
・おにぎり1個や小さめのパン
・ゼリー飲料やシリアルバー など
ポイントは「とにかく空腹の状態を避けること」です。
注意!アメナリーフには「適応の穴」が存在する
アメナリーフは、単純ヘルペスの「通常治療」には適応がありません。あくまで「再発時のPIT(1回飲み)」に特化して承認されたからです。ヘルペスの人にPIT以外の用法でアメナリーフが出ていたら、適応外になるので注意です。
抗ウイルス薬のまとめ
・「アメナリーフ」➡︎腎機能の影響をほぼ受けない、1日1回でOK、少し高価
・「バルトレックス」➡︎性器ヘルペスの再発抑制
・「ファムビル」➡︎安価なPIT療法に(2回服用)
・「ゾビラックス」➡︎子供や点滴、塗り薬の選択肢がある
参考資料
https://kawai-hifuka.jp/doctor_blog/herpes-shingles-difference
帯状疱疹と単純疱疹の違い
https://www.maruho.co.jp/medical/articles/famvir/basic/index.html
ファムビルのPITによる短期間投与について
https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00005347.pdf
アメナリーフ インタビューフォーム
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/51/6/51_581/_pdf
バラシクロビル投与後にアシクロビル脳症および急性腎障害を発症した高齢糖尿病患者の1例

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